
大分に本がある幸せ
自分の頭をフル稼働させて、新しいものを作ることはとても難しい。身の回りには誰かが作ったものであふれているから、さあ大変です! 今朝何げなく電車で聴いた音楽や、昨日見たドラマ、それから窓際に積んだまま読まずじまいの本たちも。
何かを作りたい、書きたいと思うとき、私はよく映画「アメリ」に出てくる「売れない小説家」のことを思います。独特なセリフはどこか人ごと。「小説も失敗 人生も失敗/失敗に次ぐ失敗 永遠に書いては消し/人生は果てしなく書き直す 未完の小説だ」なんて涼しい顔して発します。失敗続きで、悲しいことのようにも思えるけれど、私は彼のことがうらやましい。ネガティブに聞こえる言葉も、彼の手にかかればなぜか、すがすがしくなります。
私も好きなだけ本を読んで、そして彼のように永遠に(どんなことでも!)書く人生を送りたいと強く思います。本とペン、それから紙さえあれば、きっとかないますよね!
ついにダイホンブンも最終回。今回は大分の中に本がある幸せについて考えました。大分に縁のある小説家といえば…。思い浮かべるのは野上弥生子さんです。臼杵に生まれ、小説を書き続けて生涯を終えた人。明治から昭和の時代を生きた小説家は、15歳で学問のため上京し、21歳で結婚。その後、創作活動をしながら欧米にも旅し、芥川龍之介と交流もあったそうです。野上さんの作品には臼杵で起こった実話を基にしたものもあり、とても尊敬します。
自分で何かを生み出そうとするとき、想像する心は遠い場所へ飛躍しがちだけれど、野上さんは身近な場所や出来事を創造の糧にしているように思えます。小説の題材もさまざまで、女性の自立や歴史など幅広いということを最近知りました。
大分にいながら一人の小説家を通じて豊かな読書体験ができる幸せ。そんな特権をありがたく思います。これからも、ここ大分で楽しいダイホンブンライフを送りたいと思います。