
詩人になる
『落ち葉の頃』
落ち葉は若葉の頃を知り
若葉は落ち葉の頃を知らない
枝から離れ 落ちていく
手を振るように
かさ かさ かさ
陽の光を伴い
若葉を思い
揺れて去りたい
晩秋のキャンプ場で迎えた朝。散歩中に見た光景から、この詩が浮かんだ。
僕は、12月から詩人を名乗ることにした。
そうすると変化があった。これまでの友人が、それぞれの心の中にある詩人の部分について、僕にカミングアウトしてくれるのだ。
20年近く通う別府市の美容室のGさんにも、冒頭の詩を伝えた。「この詩に出合ってから、路上の落ち葉が気になって。スマホで写真を撮ったりするんですよ」。そうするとGさんは「僕は、小さな頃から秋が好き。落ち葉のいっぱいある場所を歩くことが何より楽しい」。落ち葉へ向けた僕の興味を、当然のように受け止めてくれた。
会社員と美容師の会話においては、なかなか生じない展開だ。詩人と名乗るゆえに、それぞれの立場や属性を超えて、成立した会話だった。なんとも豊かな気持ちになれた。
僕は縁あって、12月中に由布院駅アートホールに芸術家と3人で作品を展示している。僕の中にある詩人を、知人の芸術家が呼び出してくれたようなものだ。そもそも、僕が詩に関心を深めたきっかけは、文学の世界「詩と出会う 詩と生きる」という4年前のラジオ番組。そこで随筆家の若松英輔さんが「詩を書きなさい」と呼びかけてくれたからだ。
詩を読み、詩を詠む。自分の心を見つめ、表す。実は、だれにでもできることなのだ。僕は、そういうことをこれからも続けたい。