
強くなる
本を読むことも好きだけど、ウェブサイト上の文章も同じくらい好きだ。読書は「よし、読むぞ」と気合を入れる必要があるのに対し、ウェブはスマホでささっと読み始めることができる。そして気付けばのめりこんでしまい、小説1冊を読破したくらいの時間がたってしまう。
さまざまなサイトがある中で、一番のお気に入りは「note」。シンプルな作りで文字も大きく、読みやすい。何よりミントグリーンのアイコンがかわいい。高校生の時から読んでいるのは、夏生さえりさんや、カツセマサヒコさんのエッセー。更新されると本人たちが交流サイト(SNS)で教えてくれるので、そこからサイトにアクセスしていた。
作家の岸田奈美さんを知ったのは、彼らと交流があったからだったように思う。そこから奈美さんのnoteも読むようになった。一見すると波瀾万丈な人生だけど、本人と家族はいつも前向き。そんな明るい姿に勇気をもらうこともあれば、まぶしすぎて直視できないこともあった。
そんな奈美さんの母親・ひろ実さんが「人生、山あり谷あり家族あり」を出版した。夫と死別、ダウン症の息子、認知症の症状が出始めている母、そして自身は手術の後遺症で車椅子生活―。奈美さんのnoteで知ってはいたが、改めて読むと過酷すぎる。
術後初めて車椅子で出かけた時のエピソードがある。予想もしなかった不便さと無力感に直面したひろ実さんは「死んだほうがましだ」とこぼす。奈美さんは「死にたいなら死んでもいいよ」とパスタを食べる手を止めることなく言い、「でも2億%大丈夫」と続ける。
衝撃だった。年齢が近いこともあり、つい自分の家庭と重ねてしまう。同じ状況になったとき、私は母にそう言えるだろうか。岸田家の人たちは底抜けに明るいわけではない。私と同じように傷つき悩んでいた。違うのはそれを受け止める強さがあるかどうか。私も強くならないといけない。