みちくさ日記

「12月某日」

梨木香歩著「鳥と雲と薬草袋/風と双眼鏡、膝掛け毛布」新潮文庫

12月某日

 自宅でお昼ごはんを食べてお店に戻る。今日は、ほんの少し遠回りをして小学校の横の道を通ってみた。

 生け垣にだいだい色の小鳥とメジロが1羽ずつ。熟れはじめたマサキの実を食べに来たのかもしれない。この生け垣はリース作りの材料に困ったときに重宝する一番身近なスポットだ。

 今年も野ブドウがあの素晴らしい実を付けたし、茎がザラザラして痛いだけのつる草と思っていたカナムグラは押し葉にすると、とても絵になる。タンキリマメは実も葉っぱも比較的色が長持ちするので使いやすい。今はヘクソカズラが金色の実をたっぷり付けているし、ナツヅタの実の紺色もいい。サザンカとセンダンの実も拾える。少し先の医院に植えられたハナミズキが真っ赤な葉を落としているから、それも拾っていこう。

 植物の名前は割とすぐ覚えられるのに鳥の名前はさっぱり分からない。だから梨木香歩さんのように鳥に詳しい人に憧れる。梨木さんは鳥だけじゃなく植物や地名、地形にも詳しい。「鳥と雲と薬草袋」では一番初めに地元佐伯の鶴見が出てきてびっくりした。鶴御崎の「水ノ子島海事資料館」に隣接する「渡り鳥館」。ここには当時の灯台守が作った渡り鳥の剝製が展示されている。水ノ子島灯台が渡りのコースにあるため、灯台が放つ光に引き寄せられて激突死する鳥が多いのだとか。

 地元なのに私が初めて渡り鳥館へ行ったのは約1年前。梨木さんは「こんな鳥がまさか、と驚くような鳥もいる」と書いてらっしゃるけれど、全く知識のない私は「鳥、いっぱい!」というお粗末な感想しか持てなくて申し訳ない。けれどもこの二つの施設は1903年に建てられた西洋風の建築で、小さな窓や木製のドアノブなどが大変かわいらしく、少し遠いけれどまた行きたい場所だ。資料館の受付の一隅が職員さんのくつろぎスペースとなっているのも味わいポイントだ。施設の前の海岸で拾った、いい具合の流木はまだ活用できずにいる。

西谷 文恵

西谷 文恵

「連載タイトル / みちくさ日記」 佐伯市・1982年生まれ。佐伯小に入学して間もなく不登校となり、2年生ごろ完全に登校をやめる。中学は一度も足を踏み入れることなく入学、卒業。10代後半ごろから母の実家である書店「根木青紅堂」を手伝い始め今に至る。

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